幸せになる方法

あなたの幸せが、僕の幸せです

 と以前の文章で書いたら、口説きの文句ですねといわれた。そういう文脈ではなかったが、口説きの文句としても最高の部類に入るかもしれない。次回は使いたいものだが・・

 僕は、エゴイストで自分だけが幸せになりたいと思っている。そして、幸せになる唯一の方法というのは、自分の鏡である他者が幸せにあることだ。

 自己というのは、一般に世界を認識している記憶のことだと思っている。世界と記憶は一対一の対応をしているから、入れ替えても同じである。世界が自己である。

 ウットゲンシュタインが言うように、我々は世界の限界にいる。世界を円のようなものと考えれば、円の中心にいるのではなく、円の接点で世界を認識している。

 自分の周りを世界が囲んでいるのではない。自分の存在は、世界の端でしか知覚することが出来ない。

 その世界というのは、自分自身を写す鏡。鏡だから、前にないと写らない。厳密にいえば、それこそが自分自身である。本来私とは、私の皮膚の外面で、他者とは皮膚の内部なのではないか。

 私とは、あなたなのだ。

 「私は、私」と実存主義は主張するが、私の中に私はない。

 自分の説明として、何処の誰それで、趣味はこれで、仕事はこれですといっても、それが自分自身の存在証明になりえない。

 私とは、言葉がその関係性で意味が決まるように、周りの世界によって決まる。

 だから、私とは私の世界であり、私の世界が私なのだ。

 いまここで見ているもの、思っていることが私であることは間違いのないことだ。

 この世界に立ち現れてくる他者は、まぎれもなく私自身。

 だから、私を幸せに導くには、あなたを幸せにするしか道はない。

 「私とは、一個の他者なのだ」「私という他人」とかいう言葉が、詩人から出るように、実は私と思っている皮膚で囲まれたもの以外が、私なのだ。

 「罪と罰」でラスコーリニコフが殺した老婆は、自分自身。

 他人を殺すということは、自分自身を殺すということと同じ。

 あなたは、わたしなのだから、

 あなたの幸せこそが、僕の幸せです。